時計ブランドのロレックスをここまで有名にした背景には、歴史や逸話があっただけでなく、数々の時計ブランドのなかでも群を抜いて高性能、そして実用的だからです。ロレックスの時計の要ともいえるムーブメントは、常に世界最高品質のものが使用されつづけてきました。
以前は一部のモデルで、ほかのムーブメントメーカーからの供給を受け、自社で改良したものを搭載していましたが、現在ではすべてのモデルに搭載されているムーブメントが完全自社開発製造に切り替わっています。今回は、そんなロレックスを支えるムーブメントについて、そもそもムーブメントとは何か? そしてロレックスのムーブメントがすごいといわれる理由などを、大黒屋自慢のロレックス査定員が、ご紹介したいと思います。
ロレックスのムーブメントの凄さを紹介する前に、まずはそもそもムーブメントとは何かという点を簡単に説明していきます。
ムーブメントとは、時計の内部にある機械のことを指し、車でいうエンジンのような役割をする場所です。時計のムーブメントには、手巻きと自動巻きがあります。手巻きムーブメントは、リューズを手動で回し、ゼンマイを巻きあげるという仕組みになっています。一方、自動巻きは、機械に内蔵されているローターが回転し、伝達された動力によって歯車が動きゼンマイが巻き上げられるという仕組みです。現在のロレックスの時計では自動巻きが使われていますが、各モデルの初期のころを見ると、手動巻きのものも多く存在しています。
ロレックスのムーブメントは、その精密な働きが世界的に評価され、常に注目を浴びているのですが、なぜロレックスのムーブメントが注目されるのでしょうか?
そのひとつの理由としては、ロレックスがムーブメントを完全自社開発製造できる点にあります。ロレックスのムーブメントは、すべてのムーブメントが自社開発製造され、しかも職人による手作業の製造ではなく、完全に機械化されています。
機械化することで、一つひとつのパーツが均一になり、高い品質で供給し続けることができました。自社で開発であるため、次々に新しい機能やより高い品質のものを提供することができ、自社開発製造がなかなか実現できない他社からは、常に注目され、開発の参考にされているのです。ただ、デイトナに搭載されているクロノグラフムーブメントは、なかなか自社開発製造が叶わず、ゼニス社をはじめとする高性能高品質のムーブメントを製造するムーブメントメーカーからの供給を受け、そこに自社の改良を加えて搭載していました。
前述でも触れましたが、実はクロノグラフムーブメントに限っては、ロレックスといえど、最近までなかなか自社開発製造が叶いませんでした。しかし、2000年のデイトナのモデルチェンジを機に、やっと完全自社開発製造のクロノグラフムーブメントCal.4130が誕生。従来のクロノグラフムーブメントに比べ、さまざまな改良がなされました。詳しい変化については、別の機会でご紹介しますが、よりコンパクトになり、合理的なメンテナンスが可能、安定性や耐久性を向上させつつ、パワーリザーブも52時間から72時間へと大幅に変わりました。このクロノグラフムーブメントの開発製造によって、ロレックスはすべてのモデルに搭載されるムーブメントを自社で作れるようになりました。
さらに最近開発された新世代ムーブメントと呼ばれるCal.3255は、公式に行われるクロノメーター認証の基準の約2倍の精度をキープできるという高精度なムーブメントです。時計の心臓部の振動子は通常の約10倍もの耐衝撃性があり、時計の調速機に対して適切なエネルギーを供給する脱進機の効率も15%向上など、構造が一新され、世界基準以上の精度を打ち出した最新のムーブメントとなりました。この最新ムーブメントが搭載されているのは、オイスターパーペチュアルデイデイト40です。
いかがでしたか? ロレックスの時計は、名前に頼ったものではないことがお分かりいただけましたでしょうか。常に世界最先端の改良にチャレンジし続けるロレックスの気概が、世界最高のムーブメントを作り出しているのですね。