玄人はなぜ手巻きを好む?大黒屋の鑑定士が手巻き・自動巻きの違いと魅力を解説
「一生物の時計の購入を検討しているのですが、手巻き・自動巻き・クオーツ、どれがいいんでしょうか?」
「自動巻き派なんですが、手巻きの時計もいいかなと思っています。それぞれメリット・デメリットをくわしく教えてください!」
ロレックスなどの高級時計について調べていると、手巻き・自動巻きというキーワードを見かけますよね。
「今どき手巻きってどういうこと?」
「電池で自動的に動くものではないの?」
そんなふうに思われるかもしれません。
実は、いわゆる高級ブランドと呼ばれる時計の一部は、自動で動かないものがあります。
高級時計は、手巻き・自動巻き・クオーツといったいくつかの種類に分けられ、なかには「手巻きじゃないと絶対にイヤ!」というような強いこだわりを持つ方も少なくありません。
こんにちは。
手巻き時計を使っている男性をみると、なぜか背筋がピンと伸びてしまう大黒屋査定員の富永です。
職業柄、男性が着けている腕時計を常にチェックする習慣がついております。
この記事をご覧になっているということは、これからまさに一生モノの高級時計を購入されようとしているのかもしれません。
もしくは、すでに自動巻きの時計をお持ちで、次は手巻きもいいかなとお考えなのかもしれませんね。
ご存知の方も多いと思いますが、ロレックスのようなスイス製の高級時計の大半は、電池ではなくゼンマイを巻き上げて動きます。
このような時計は、『手巻き』や『自動巻き』と呼ばれる機械式時計です。
一方で、電池で動いている時計はクオーツと呼ばれます。
つまり、ロレックスの多くは電池で動く時計ではないということです。
ただ、こう説明されても自分にどのタイプが合っているのかよくわかりませんよね。
本来であれば、あなたのこだわりや時計の利用頻度などを中心に検討する必要がありますが、最初はそれが面倒なんですよね・・・。
自分でイチから勉強しなければいけませんから。
それならということで、今回は【ロレックスをはじめて購入するという方に推奨の型】をお教えしようと思います。
最初に結論からいってしまうと、私、富永的にはスバリ自動巻きがオススメです!
自動巻きは、ロレックスの時計の魅力を楽しめますし、手でゼンマイを巻く手間がありません。
つまり、面倒が少ないんです。
とはいえ、私は手巻き時計のユーザーも愛してやみません。
むしろ尊敬の念を抱いてさえしまいます。
毎日時計のリューズを巻くという面倒くさい作業をあえて選んでしまうほど、時計好きという思いが感じられるからです。
こういってしまうと、手巻き時計も魅力的に感じてしまうかもしれませんね(笑)。
そこで今回は、毎日大量の高級時計を査定している私こと大黒屋の富永が、手巻き・自動巻き・クオーツの3タイプの違いや魅力をたっぷりお伝えしていきたいと思います。
それぞれのメリット・デメリットをこまかく説明していきますね。
また、最近の手巻きや自動巻きの時計は以前とくらべてだいぶ進化していますので、ロレックスのヘビーユーザーの方もぜひお付き合いいただければうれしいです。
今回の記事は、「手巻きと自動巻きの違いがよくわからない・・・」という方がひとりでも少なくなればという思いで執筆しました。
最後までご覧いただければ幸いです!
それではまいります!
今回登場する大黒屋の査定員です。
-
富永:自他ともに認める無類の時計好き。自分の猫背がコンプレックス。
-
堀井:リサイクルショップでのバイト経験あり。
どんな品物でも対応できる万能査定員。陽気なイジられキャラ。
時計の動力は手巻き・自動巻き・クオーツの3タイプ
堀井
富永さん、お客様に「クオーツ・手巻き・自動巻き、どの時計を選べばいいの?」って聞かれることがありますよね?
富永
あるわねぇ・・・。
堀井
「自動巻きと手巻きの違いがよくわかない・・・」というお客様もいらっしゃいます。
富永
オーケー!それなら、まずはクオーツ・手巻き・自動巻きの違いをカンタンに説明するわね!
動力 | 代表的な時計 | 特徴 |
---|---|---|
機械式 | 手巻き |
リューズを回してゼンマイを巻き上げる ⬇ 毎日決まった時間に、リューズを巻かなければいけない |
自動巻き |
腕にはめた時の振動でローターが回転しゼンマイが自動で巻き上げられる ⬇ 毎日、時計を腕にはめなくてはならない |
|
電池式 | クオーツ |
時計は電池で動く ⬇ 普段はなにもしなくていい(電池が切れたら交換) 時間がズレない |
富永
今現在、ロレックスが販売している時計は、すべて機械式時計ね。
堀井
「機械式時計とは、ゼンマイを動力にして時計を動かしている」
このようにお客様へ説明しても、ピンとこない方がいらっしゃいます。
富永
そういう時には、おもちゃのチョロQ(ゼンマイで動くミニカー)を想像してもらうのがいいと思うわ。
チョロQはタイヤを後ろに回すことで、ゼンマイが巻かれ、そのゼンマイがほどける動力で動く。
機械式の時計もゼンマイを巻いた動力で動いているのよね。
堀井
自分で巻くマニュアル仕様が手巻き。
同じ機械式でも自動で巻いてくれるオートマ仕様が自動巻き。
電池のみで動いてくれるのがクオーツ時計ですね。
こだわり派は手巻きが好き
堀井
手巻き時計は、自分で巻き上げる手間がかかります。
それでも、手巻きにこだわるお客様は少なくありません。
富永
時計ファンのうち、【無類の時計好き】というお客様は手巻きを選ぶ方も多いわよね。
40~50代になって、手巻きの面倒さを楽しみに思える機械好きな人。
堀井
大人の余裕ってやつですね・・・。
手巻きにはどんな時計がある?
堀井
手巻き時計は、スポーツ系よりもドレス系が多いです。
ロレックスで手巻き時計といえば、チェリーニですよね。
富永
かつてロレックスは手巻きが主流だったから、アンティークのロレックスは手巻きが多いわね。
アンティークのロレックス 6694
手巻きには語りたいエピソードがある
富永
手巻きに歴史が刻まれているモデルもあるわよね。
堀井
といいますと?
富永
たとえば、オメガのスピードマスター。
アームストロング船長が月面着陸した時に使用していたというムーンウォッチは手巻きに意味がある時計よ。
堀井
無重力空間でも使われたあの時計ですね。
富永
宇宙空間でも時間に狂いがないようにと、「あえて」手巻きが使用されたのよね。
そのエピソードがあるから、時計ファンとしては「オメガのムーンウォッチは手巻きでなくっちゃ・・・」というわけ。
堀井
こういった歴史的背景も、時計を選ぶ上での魅力のひとつですね。
手巻き時計の注意点
堀井
手巻き時計を使用するときの注意点を教えてください。
富永
次の点に注意したほうがいいわね。
- 毎日同じ時間に巻く
- 巻き止まり以上巻かない
堀井
毎日、同じ時間に巻いたほうがいい理由は?
富永
時間が狂うのを防ぐため。
手巻き時計は、ゼンマイを巻ききった場合、40~50時間でエネルギーが切れる。
チョロQも走り出しと停止前ではスピードが違うわよね。
堀井
だんだんスピードが落ちてきますね。
富永
それと同じ。
手巻きの時計も40数時間が経つ頃になると、徐々に動きがゆっくりになるの。
エネルギーが切れる直前ではなく、まだ十分にエネルギーが残っているタイミング(24時間経過後)に巻き上げたほうが、時間がズレにくいのよ。
堀井
「巻き止まり以上は巻かない」という注意点は?
富永
巻いている最中に、巻き止まり(これ以上巻けない限界点)の感覚が分からずに、巻き続けると機械を壊してしまうことがあるの。
上手な巻き方は、巻き止まりを意識しながら、ゆっくり巻くことね。
堀井
なるほど。気をつけましょう!
進化する手巻き
堀井
やはり、毎日巻く手間は手巻き時計のデメリットです。
富永
最近では、手巻きの手間を減らす時計が出てきているわね。
従来の手巻き時計は、フルまで巻き上げた状態でせいぜい2日しか持たなかった。
最近はより多くのパワーを蓄えられるようになって、10日も持つ時計があるわ。
堀井
ロングパワーリザーブモデルっていうやつですね。
富永
パネライのルミノールマリーナ8DAYSというモデルは、フルまで巻き上げた状態で8日間も持つのよね。
堀井
でも、あまりパワーが持ちすぎても、前回いつ巻いたのか忘れてしまいそうですね。
富永
そういう人のために、パワーの残量を表示してくれる手巻きのモデルもあるわね。
パネライの「PAM00090」とか。
- パネライ PAM00090
- パワーの残量を示す
「パワー・リザーブ」
堀井
手巻きもドンドン使いやすく進化しているんですね。
人気のロレックスモデルの多くは自動巻き
堀井
同じ機械式時計でも手巻きの手間が省けたのが、自動巻き時計です。
富永
自動巻きは時計に内蔵されているローターがゼンマイを巻き上げてくれる。
時計を着けているだけで、腕の振動が伝わってローターが動く仕組みね。
堀井
とはいえ、毎日身に着けていないと、いずれ止まってしまうんですよね。
そこは手巻きと同じ。
富永
ローターが入っている分、ケースが分厚くなっているのも特徴ね。
- 手巻き
ヨコから見た手巻き ケースが薄い
- 自動巻き
ケースが分厚い
堀井
自動巻きの分厚くて頑丈なケースを牡蠣の殻に例え、オイスター(牡蠣)パーペチュアルと呼ばれていますね。
自動巻きにはどんな時計がある?
堀井
最近のロレックスの人気モデルはほとんど自動巻きです。
- デイトナ
- サブマリーナ
- GMTマスター
富永
ロレックスのスポーツモデル。
デイトナ、エクスプローラー、サブマリーナなど人気のロレックスはほとんど自動巻きね。
さっき手巻きの代表として紹介したチェリーニも自動巻きがあるのよね。
堀井
もはや機械式時計は自動巻きが主流ですよね。
自動巻きも日々進化している
堀井
自動巻きはローターが内蔵されているため、ケースが分厚い。
そのため、「見た目がゴツくてイヤ」という方もいらっしゃいますね。
富永
でも、自動巻きもドンドン薄くなっているわよね。
オーデマ・ピゲのロイヤルオークエクストラシンは、かなりスリム!
- オーデマ・ピゲ ロイヤルオーク15400ST
- オーデマ・ピゲ ロイヤルオーク15202ST
1.7ミリもスリム!!
堀井
それに、ロレックスでもムーブメントが進化してパワーリザーブが延長されていますね。
富永
新型デイトナ116500LNは、最長72時間(3日間)持つようになったわ。
堀井
これまでの自動巻きのパワーリザーブは、最長48時間(2日間)でしたから、1日延びましたね。
手巻きと自動巻き、どちらを選ぶかはデザイン次第な部分も
富永
手巻きも自動巻きもそれぞれ進化して、徐々に差がなくなってきたわね。
堀井
これまで「薄い時計がいい」という方は手巻きをお選びでした。
でも、最近は自動巻きも薄くなっているし、どちらもパワーが長持ちします。
富永
そうなると、最終的にどちらを選ぶかはデザインで決めればいいと思うけど・・・。
堀井
ちなみに、富永さんは手巻きと自動巻き、どちら派ですか?
富永
私は普段使っている時計は自動巻きだけれど、手巻きの時計も持っているわ!
でも手巻きは、結婚式に招待された時とか、特別な日しか使わないかな。
堀井
富永さんのように、メインで使っている時計は自動巻きだけれど、2本目、3本目に手巻きという時計ファンは多い気がします。
富永
堀井君は?
堀井
僕はダンゼン自動巻き派ですね!毎日巻くのは大変ですから。
でも、手巻きも持っている・・・っていうのは憧れますね。
富永
大人の余裕ができたら買ってみよう(笑)
クオーツはジュエリー時計
堀井
手巻きや自動巻きの機械式時計に対して、手間いらずなのはクオーツですね。
富永
クオーツは電池で動いているから、なにもしなくてOK。
でも、時計ファンからすると、面白みに欠けるわよね。
時計好きな人は機械好きが多いから。
堀井
クオーツ時計は、もともと日本の時計メーカーのセイコーが、手軽に時計を利用できるように普及させたものですよね。
クオーツにはどんな時計がある?
堀井
有名宝飾ブランドが作る時計は、クオーツが多いですよね。
富永
ロレックスなどの時計ブランドより、宝飾ブランドの女性ものが多いわね。
シャネル、カルティエ、ショパールなんかの時計がそう。
- カルティエの時計
- シャネルの時計
- ショパールの時計
堀井
こういった宝飾ブランドの時計は、ダイヤや金がふんだんに使われていて、宝石を身に着ける感覚なんですかね。
富永
女性の場合、時計に求めているのは機械としての面白さより、ジュエリーとして華やかさなのかな。
実はロレックスにもクオーツ時計がある
堀井
ロレックスにもクオーツ時計がありましたよね?
富永
そうなの!
ロレックスの本流は機械式時計だけれど、少しだけ作ったことがあるのよね。
堀井
デイトジャスト17013ですね!
富永
今は廃版になっているから、買取価格も上がっているわね。
時計デザイナーのカリスマ、ジェラルド・ジェンタデザインとも言われているモデル。
堀井
出た~・・・。ジェラルド・ジェンタ・・・。
ケースが角ばっているのは、ジェラルド・ジェンタの特徴ですね。
富永
いろいろな意味で価格が上昇している、レアなクオーツ時計ね。
手巻き・自動巻き・クオールのメリット・デメリット一覧表
堀井
手巻き・自動巻き・クオーツのそれぞれのメリットとデメリットを、あらためて整理してみましょう。
堀井
結局のところ、どの時計が一番オススメなんですか?
富永
「これから時計を趣味のひとつにしたい」という方なら、まずは入門として自動巻き。
本格的に時計にハマったら、手巻きも楽しんでみるという流れかしら。
堀井
時間さえ確認できればいいという方は、クオーツですかね。
富永
でも、ロレックスを検討中の方には、まずは自動巻きをおススメしたいかな。
堀井
そうですね。
一度でも機械式時計を使うと、時計のおもしろさや魅力がわかってくると思います!
大黒屋より一言
富永
時計の手巻き、自動巻き、クオーツの違い、おわかりいただけましたか?
堀井
生活パターンやデザインであなたに合う時計を探してみてくださいね。
富永
どの時計がいいのか迷ってしまう、選び方を知りたいという方はお気軽に大黒屋までご相談ください。
スタッフ一同お待ちしております!