なんだ堀井、騒々しい・・・。シャネルのチェーンショルダーじゃないか。

ふぅむ・・・（ジッっと見る）。たしかに偽物のようだね・・・。

でも、もしかしたら本物かもしれない・・・。

実は、シャネルのチェーンショルダーの真贋はプロでも見分けるのが難しいのさ。

シャネルのチェーンショルダーは歴史が古い。本物でも製造年代によってシャネルマークの位置や、使用されている部品が違うんだよ。

だから本物と偽物の区別が一筋縄ではいかんのだ！堀井！

まずは偽物かどうかを見比べるために、3つの本物のチェーンショルダーを用意する。

貴様はアマチュアか？何度も同じことを言わせるんじゃない。

さっきも言ったようにシャネルのチェーンショルダーは時代によって微妙に作りが違う。

だから、偽物と本物を見比べるときには、ひとつの時代のバッグとだけ見比べても、不十分なのだ！

その通りだ！
さまざまな年代の本物と見比べて、はじめて偽物の判断を下すことができるのだ！

うむ。今回はバブル全盛の1995年から、バブルファッションが再燃しはじめた2009年、さらに最近の2015年まで、3つのタイプのチェーンショルダーを用意した。

おそらく2008年頃に製造されたものと考えられる。

うむ。偽物を見分ける鉄則は、状況証拠を積み重ねることだ！

偽物を製造する職人は、それまでに作られたシャネルの本物を参考にしながら、それらしいバッグを作っている。

しかし、本物のような高い材料費はかけられないし、本物の職人のような技術もない。

ただし、結論を急いではいけない。

偽物の証拠は1つだけでなく、いくつも積み重ねなければ、偽物とは断言できない。

まずはバッグ表面の革から見てみよう。

本物は、ラムスキン（子羊の革）だ。

革の手触りに違いがないか、偽物と本物を比べてみたまえ。

どれどれ、本物のラムスキンなら、動物の革独特の吸い付くような柔らかさがある。

しかし、合皮だと、柔らかさはなく、表面がテカっているはずだが。

（偽物を触って）たしかに柔らかいな・・・。では、もっとアップで見てみろ。

ラムスキンは表面にポツポツとした毛穴があるはずだ。

となると、偽物もラムスキンを使用しているようだな・・・。

偽物はコストを抑えて、合皮を使うことが多いんだが、今回は違うようだ。

今度はさらにアップにして、縫い目を見てみよう。

いいか、糸の色に注目してみるんだ！

偽物の糸の色を見ると、ところどころ白くなっているところがある。

これは糸に染料がしっかりしみ込んでいない、安物の糸を使用している証拠だ。

肉眼では見づらいが、ルーペや虫メガネを使ってみると、こういうアラが見えてくることがあるのだ！

お次は、このバッグの主役ともいうべき、シャネルマークのターンロック（バッグの留め金）を見てみよう！

うむ、バランスよく作られていて、マークそのものは正確だな。

金メッキに映り込む風景がゆがんでないか、金属のバリが飛び出してないかをみるのだ。

これは「アンティークシルバー」。

金属がマットな仕上げになっているだけだ。

本物でもこの仕上げになっていることがあるから、偽物の証拠にはならない。

では、ターンロックを横から見てみよう。

うむ、雑な塗り方だし、こんな造りは本物ではありえない。

正規店で修理をすることはあるけれど、こうした金具部分の塗り直しというのは、本物のシャネルではしないはずだ。

お次はターンロックの真ん中に取り付けられた金具に注目していこう。

たしかにこのまっすぐな棒だけ見ると、まだなんともいえないな。

この金具はクルクル回るから、この部分を引っ張って動かしてみよう。

偽物を見ろ！
真ん中の金具に普通のネジが使われているな。

こういう廉価な部品が、シャネルの製品に使用されることはまずない。

今度はバッグの蓋を開けて、内側に偽物と疑わしき部分がないかを見つけていこう。

まずはターンロックの裏側にあたる金具に注目しよう。

本物は「マイナスねじ」を使用しているが、偽物のネジだけ「星形ねじ」だな。

シャネルで星形ネジは見たことがない。

一部の製品（木やべっ甲を用いたもの）で「プラスねじ」を使用するぐらいだ。

今度はバッグの内側にあるファイスナープルに注目してみよう

ところが、シャネルでもYKKのファスナーを使用している製品もあるんだよ。

ただし、シャネルが「YKK」のファスナーを使用する時は、「YKK」という刻印を潰して使用しているはずだ。

だから、「YKK」という刻印が残っているという点で偽物と疑っていいだろう。

今度はファスナーを実際に開けてみよう。

本物はファスナーを開けると、ここはポケットになっていて、物が入れることができるハズなのだが・・・。

さらに内側を見ていこう。

シャネルのチェーンショルダーには、蓋の中にもうひとつ内蓋が付いている。

これを開いてみると・・・。

内蓋を開けると、内ブタのホックの受け側があるから、ここに注目してみよう。

ほかのブランドでも、偽物と本物を見比べる時に、ホックの受け側の留め具をチェックすることは多いな。

製造が古いチェーンショルダーは、必ずしも「CHANEL PARIS」の刻印があるとは限らないんだ。

金属の文字の刻印が潰れているなど、留め具が汚いと偽物の疑いが濃い。

たしかに刻印自体はキレイだ。

ただし、よく見ると文字に紫の色が付けられているのがわかる。

私は、本物のホックの刻印に色が付けられているのを見たことがない。

ただし、シャネルのチェーンショルダーはさまざまなバージョンが作られているから、これだけで偽物とは断言しにくい・・・。

今度は内蓋を開けたところにあるシャネルマークのステッチを見比べてみよう。

出来の悪い偽物は、シャネルマークのステッチに次のような特徴があるものだが・・・。

このステッチの点においてはアウトとはいえないな・・・。

まだあきらめてはいかんぞ！

シャネルマークのステッチの下にある、「CHANEL ®」の刻印を検証してみよう。

この「CHANEL」の刻印は、文字が革にプレスされていて、その溝に金具と同じ色の塗料が塗られているのが特徴だ。

本物と見比べてみたまえ。

たしかに文字にメリハリがない感じはするな・・・。

ただし、この刻印の塗料は、ひとつずつ手作業で行われているから、個体差もあるんだ。

本物であっても、塗料がにじんだりすることがあるから、ここだけでアウトと判断するのは厳しいな。

ちなみに、1995年製造のラムスキンの本物の下には「MADE IN FRANCE」の刻印がないけれど、この年代のチェーンショルダーはバッグの内側に刻印があるんだ。

最後にバッグの中にあるシリアルナンバーをチェックしよう。

チェーンショルダーのシリアルナンバーは、バッグの内側のハジに付けられている。

チェーンショルダーの場合は、だいたいこの場所だな。

バッグを裏返して、このシリアルナンバーの数字に注目してみよう。

実は、そのシリアルナンバーの数字がギザギザしているのは本物の証なんだ。

それから、シール部分に数色のラメが散りばめられている点も本物のシールの特徴。

シリアルナンバーの文字が青っぽく描かれていると、偽物の可能性が高いんだがな。

実は、シリアルナンバーを内側から見るとこんな風に見えるんだよ。

うむ。こうやってブラックライトを当てるとキチンと数字が読めるのは、本物のシールが貼られているということだ。

周りのブルーの糸くずの光りかたもほぼ一緒だから、シールに関していえば、本物だといえる。

いや、ここまでの状況証拠からすると、このシールがキメ手になるとは思えない。

もしかしたら本物からはがしたシールを貼り直した可能性も考えられる。

そもそもカンタンにはがして貼ることができるシールではない。

しかし、もしかしたら、その技術を持つセミプロが偽造に加担しているのかもしれない・・・。

では、これまで検証してきた偽物と疑われる状況証拠を振り返ってみよう。

そうだな。
これだけの証拠があれば、偽物確定といっていいだろう・・・。

偽物の職人の技術も進化しているから、最近は偽物といえども侮れないんだよ。

だから、状況証拠を積み重ねて、相手を追い詰めるしかないんだ。

その通り！
本物を見分けるには、自己研鑽しかないのだ！

これらのポイントをチェックしても、なかなかおひとりで真贋の判断をするのは難しいかもしれません。

もし、専門家に本物かどうか判定して欲しいというお客様は、正規ブティックへお持ち込み頂くのもひとつの手段です。

なお、シャネルのチェーンショルダーバッグは年数が経過していても状態次第で高価買取が可能ですよ。

ご自宅で眠っているシャネルのバッグがありましたらぜひ大黒屋へご相談ください。スタッフ一同お待ちしております！