パネライ
ルミノールドゥエPAM00674を大黒屋のマニア査定員が辛口レビュー!

今回レビューするのは、2016年のバーゼルフェアで発表されたパネライの新作、ルミノール ドゥエ PAM00674。
その特徴と魅力について、大黒屋査定員が目利きの視点でお話していきたいと思います。
話し手は、自他ともに認める時計オタクの大黒屋査定員、瀧正貴です。

今回ご紹介する新作時計は、パネライ ルミノール ドゥエ PAM00674
― そもそもパネライはどんな時計メーカーですか?
パネライは高級時計ブランドですが、もともとは軍用の時計を製造していたイタリアのメーカーです。
ですから、パネライの時計は軍用の特徴が随所に見られます。

軍事の最前線でもパッと時刻がわかるように、ケース(文字盤)が大きいです。
また、軍では時計と一緒に震度計やコンパスを腕にはめるので、それらが時計のリューズに当たらないように、ガード(リューズガード)がついています。
「パネライの●●というモデルは、△△の最前線で使われていた…」なんて、男子が好む話題ですよね。
こうした軍用時計の特徴や歴史的背景から、パネライは熱狂的なファンがいるブランドなのです。
― 今回の新作、パネライ ルミノール ドゥエPAM00674はどのような時計でしょうか?

ルミノール ドゥエPAM00674
ルミノール ドゥエPAM00674 は、パネライにとって転換期のモデルと言えるでしょう。
この時計は、これまでの実用的な軍用時計から、普段使いの時計へ舵を切っているのです。
これまでの特徴を残しつつも、装着感、デザインなどがこれまでの軍仕様から離れていっています。
― 金額、時計のランクはどれくらいでしょうか?
ルミノール ドゥエPAM00674の定価は120万9,600円。
パネライの他のモデルの相場はだいたい70~80万円ですから、パネライの中ではハイエンドモデルといえます。
ロレックスで言えば、デイトナやヨットマスターと同じくらいの価格帯ですね。
軍用からメジャー路線に切り替わった?
軍用時計からモデルチェンジをしているというルミノール ドゥエPAM00674。
一体どんなところが、これまでのパネライと違うのでしょうか。
パネライでは異例の薄型化
― 旧モデルと比較すると、薄くなったのですか?
はい。これまでのパネライは、とにかく時計が大きいことが特徴でした。
大きいものは、文字盤の直径が47mm、厚さは15.6mmもあるものもあります。
腕に着けるとずっしりと重く、金属の板を手首に乗せているような感じです。
しかし、そこまで大き過ぎると、日本人のように華奢な人は付けにくいですよね。
新モデルは、厚さを40%も圧縮、1.5~2.0mmは薄くなっています。

新作ルミノール(左)と旧作のルミノール(右) 新作はかなりスリムに!
重さも40~50g軽くなりました。
薄型にすれば、新しいファンを獲得できるのではという思惑がパネライにあるのでしょう。
― なぜ薄くすることができたのでしょうか?
新作は時計内部のマイクロローターという小さいローター(遠心力で自動巻き上げを行う機構)を採用したことで、ケースの圧縮化に成功しました。

新モデルは従来のローターよりもかなり小さくなったことがわかります。
上の写真にある円盤をカットしたような部品がローターです。
本来、ローターは小さくなるほど遠心力が失われるため、時計自体の機能が落ちてしまいます。
これまでのパネライならば、時計の薄さよりも、軍用としての実用性を重んじていました。
大きいローターを使うことで、時計の故障を防いでいたのです。
しかし、今回は薄型にするために、あえてローターを小さくしています。
― 小さいローターになって、時計の機能に違いはありますか?
今回のマイクロローターには、タングステンという重い金属が使われています。
その重さで巻き上げに必要な遠心力を補っているので、機能性は問題ありません。
ただし、タングステンはとても加工が難しいため、高コスト素材なのです。
薄さを実現するため、わざわざ高コストの素材を採用したのでしょう。
軍用ならありえないデザイン
― 見た目は旧モデルとそれほど変わらないような気がするのですが?

文字盤をよく見てください。
新モデルの文字盤は中心から放射しているような印象。
サンレイ仕上げが施されていることがわかります。
写真ではわかりづらいかもしれませんが、新作は文字盤の中心から外側にかけて放射状の模様があります。
これは太陽の光のように見えることから、サンレイ仕上げと呼ばれます。
スイスの伝統技法で、ロレックスが採用していることでも有名です。
かつてのパネライでは、このような目立つデザインは敬遠されていました。
ここからも、新作は軍用時計からデザイン重視の時計にしようとしていることがわかります。
パネライがモデルチェンジに踏み切った理由は?
― ズバリ、ルミノール ドゥエPAM00674はヒットすると思いますか?

う~ん・・・パネライの熱狂的なファンは買わないでしょうね。
彼らにとってパネライの魅力は、質実剛健な軍用時計である点。
パネライファンは、同じ120万円出すなら、アンティークのパネライを選ぶでしょう。
ただし、「パネライって大き過ぎたけど、これなら着けてみたい!」という新しいファンはできるかもしれませんね。
あくまでルミノール ドゥエPAM00674は、新たな購買層を開拓するために作られたモデルといえるでしょう。
― なぜ、従来のパネライファンを裏切って(?)まで、このような新作を作ったのでしょうか?
新たなファンを開拓しなければいけないほど、パネライの現状が厳しいということだと思います。
パネライはすでに軍用を好むようなファンを開拓し尽くしてしまっているのです。
ここ数年は新作を出し過ぎて、ファンに飽きられてしまった感じもあります。
また、これまでの販売戦略も通用しなくなっているのでしょう。
― これまでのパネライの販売戦略とは?
軍用時計として生まれたパネライですが、世界的な軍縮のの影響などで、一時経営難に陥っていました。
そこで経営の立て直しのため、1997年にリシュモングループの傘下になったんです。
※リシュモングループ
1988年に南アフリカの実業家ヨハン・ルパートによって創業されたラグジュアリーメーカーの企業グループ。同じ傘下にはカルティエやヴァシュロン・コンスタンタンがある。
当時のパネライの愛好者は、シルベスタ・スタローン、アーノルド・シュワルツネッガーのような有名人が名前を連ねていました。
その結果、パネライの人気は劇的にアップし、あっという間に品薄状態に。
この時パネライは、売れるからといってどんどん作ろうとせず、年間1万本売れる時計でもあえて500本しか作らないという戦略に出ました。
雑誌などのメディアの露出も避けたため、ファンの購買意欲をそそり、人気に拍車をかけたのです。
しかし、2010年を過ぎた頃から次第に需要が飽和し、現在、再び岐路に立たされているというわけです。
ルミノール ドゥエPAM00674の率直な感想

― ルミノール ドゥエPAM00674の正直な感想は?
パネライは大きいのが売りだったので、小さく薄くなってしまうと、その価値がなくなってしまうのではと心配になります。
しかも今回は120万円というハイクラスな時計。
同じような価格だと、他にもいい時計がたくさんあるので、僕はこの新作はあまり人気が出ないのではないかと思っています。
確かに、マイクロローターを採用し、ケースを薄くした技術は革新的です。
ただし防水性は「300m防水」から「30m防水」に落ちていて、マイナス要素もあります。
デザイン | ★★★★4 | 従来のパネライを踏襲しているが… |
---|---|---|
精度 | ★★★3 | これまでの精度を捨ててしまった罪は重い |
装着感 | ★★★★4 | 従来より軽いけれど やはり大きめ |
コストパフォーマンス | ★★★3 | 120万円出すならば他の時計の方がおススメ |
トレンド性 | ★★★★4 | パネライの歴史にトレンド性は不要では? |
― 余計なお世話かもしれませんが、パネライは今後どんな戦略を取ればいいと思いますか?
パネライは、もともと万人受けするブランドではありません。
ですから、モデル数を増やして購買層を広げる戦略では成功しないと思います。
10人中2人くらいに支持されるものを作り、単価を上げるほうがいいのではないかと。
とはいえ、パネライは販売戦略が上手いので、今回の新作が大ヒットする可能性もゼロではないでしょう。
果たして僕の予想が当たるのか、時計ファンとしても注目していきたいと思います!
大黒屋より一言
パネライはコアなファンが多い時計メーカー。
ルミノール ドゥエPAM00674は、従来のパネライとはちょっと違ったモデルようですね。
しかし、これまでハードルが高いと感じていた人にとっては、憧れのパネライを手にできるチャンスかもしれません。
「ルミノール ドゥエPAM00674を売りたい、買いたい、もっと知りたい!」というお客様は、お気軽に大黒屋にご相談ください。