そもそも金の売り時・・・金の公表価格が上がるのはどんな時ですか?
金相場では、次のような要因で価格が上昇しています。
- 為替が円安になった
- 国際的な金融不安が起こっている
- どこかしらの国が金を買ったという情報が出回る
- 新興国の需要の高まり
それぞれ詳しく説明していきましょう。
為替が円安になった
円安だと、金の価格が上昇するのですか?
はい。
円安になると、ブランド品やワインなどの輸入品が高くなったり、ガソリン代(原油)が値上がりしますよね。
日本で金は採れませんから、金は輸入品に該当し、為替の影響をもろに受けるのです。
ですから、為替が円安の時は、円建てでの金の公表価格も上がるのです。
現在(2020年2月)、日本はゆるやかな円安傾向ですが、金の価格はほぼ平行線が続いています。
実はここ数年、世界市場での金価格、いわゆるドル建てでの金の価格は下がっているんですね。
しかしそれはあくまでドル建てでの話。
ドルに対して、金の価格が安くなっている一方、円安なのでドルに対して円の価格も同様に下がっているため、円建て相場では金は高値のままなのです。
現在(2020年2月)、1ドルあたり円の価格は105〜110円といったところでしょうか。
115円・・・120円と円安に進めば進むほど、日本国内での金の価格は上昇するといえるでしょう。
国際的な金融不安が起こっている
よく聞く話ですが、金融不安や情勢不安は金の価格に影響を与えるのですか?
はい、有事の金という言葉があるのですが、先行きが見えない不安な時に、人は金を求めます。
その理由はこうです。
「これから景気が悪くなるかもしれない…」という金融不安が起こると、投資家たちは株などから資金を引き上げる傾向が強まります。
極端な話、株券がただの紙クズになってしまうリスクを避けるためです。
株や貯蓄などの金融商品は、景気がいい時は配当や金利を生みますが、景気が悪ければ、一瞬でその財産を失ってしまいかねません。
それに対して金は、金利はつかないものの、価値が消滅することはないですよね。
景気が悪くなる時や情勢が不安な時に、安全資産である金の需要は高まります。
欲しがる人が多ければ、金の価格は上昇していきますから。
ここ15年以内の出来事でいうと、金相場に影響を与えた金融不安は以下ですね。
- サブプライムローン、リーマンショックをはじまりとする金融危機
- アメリカや主要国の大規模な量的緩和政策(ゼロ金利政策)
- ギリシャ危機
- スペインのカタルーニャ地方の独立運動
サブプライムローンをきっかけとした一連の金融危機では、『ドルが危ない』と投資マネーが、金へと流れました。
同様に2010年のギリシャ危機では、『ユーロの価値がなくなる…』という不安が広がり、金の需要が高まったのです。
アメリカの金融緩和政策(ゼロ金利政策※)は、「ドルに金利をつけません」という政策ですから、銀行にお金を預けても利息がつきません。
利息がつかない預金に魅力はないため、「どうせ金利がつかないなら、リスクの少ない金のほうがいい!」と、金投資のニーズが高まりました。
2017年は、スペインのカタルーニャ地方の独立運動が、地味に金相場に影響を与えています。やはり、ユーロに対する不信感が起こったためです。
2019年は米中による貿易戦争や世界経済の状況が懸念され、今後金の価値が2013年を上回るのではないかと噂されていました。
こういう先行きが見えない時ほど、安全資産である金が買われ、金相場が上昇します。
(※)
アメリカが意図的にドルの魅力をなくし、ドル安を誘発した政策。
身近なところでいうと、北朝鮮のミサイル発射は金相場に影響を与えますか?
北朝鮮のミサイル発射が為替相場に与える影響は、かなり限定的です。
今のところ多少為替が変動しても、1日ほどで元に戻っていますね。
つまり、金の価格にも影響はほとんどありません。
ちなみに、「ミサイルが落ちた時のために金を買っておこう」という方もいますが、これは素人考えかもしれないです。
「万が一、日本にミサイルが落ちても、日本円は上がる」と投資家の間ではみられています。
「その後の復興需要が必ずあるから、円が買われる」のだそうで、今のところその動きに大きなズレがありません。
実際に東日本大震災の時も、復興需要で積極的に円が買われたといいます。
自国の危機に、自国の通貨が上がるの値動きをするのは円だけで、特殊な現象なんだそうですね。
つまり、日本でミサイル飛来などの情勢不安があったとしても、金相場が跳ね上がることは考えにくいといえます。
どこかしらの国が金を買ったという情報が出回る
「国が金を買う」とはどういうことでしょうか?
実は、金を持っているのは個人だけではありません。
国も資産として金を保有しているんですよ!
下のグラフをご覧ください。これは世界に流通している金の用途を示しています。
世界にある金のうち、40%がネックレスや時計などの宝飾品、20%が機械の回路などの工業製品に使われていますね。
それ以外の40%は、投資のために『資産』として保有されている金なのです。
この投資用の金のうちの半分、つまり全体の20%がアメリカやEU、中国など、各国の中央銀行が保有している金にあたります。
もちろん日本でも日銀が金を保有しているのです。
当然、国が保有する金ですから、ハンパな量ではありません、トン単位です。
どこかの国が金を買うとなると、トン単位の金が一気に吸い上げられていくため、市場に出回る金の量が減少します。
数が少なくなれば価値が上がりますから、金の価格は一気に上昇するんですね。
特に2010年以降は、金を売る国より、金を買う側に回っている国の方が多いようです。
国による金の売買ニュースを事前にキャッチすることはできますか?
こういうニュースは国家機密ですから、事前に流れることはまずありません(笑)。
後になって、「〇〇白書」のようなレポートで、「実は中国が金を買っていた」という事実が明るみになります。
そのニュースが出たとたんに、証券会社や個人投資家も一気に動くでしょう。
とくに中国とインドが金を買ったときは、金価格に大きな影響があり、金相場が上昇します。
新興国需要の高まり
中国やインドのような新興国の影響が大きいのですね?
はい。
最近の金価格を押し上げているのは、中国、インドや南米などの新興国が金を求めているから、というのもあります。
先ほどのグラフでいうと、金用途の40%を占める宝飾品需要のほとんどは新興国のものです。
これらの国の経済成長が著しいことはご存知ですよね。
中でも中国人とインド人は、金が大好き。
歴史的にも金を身に着けることがステータスになっています。
経済成長で富裕層が増えたため、中国やインドでは、金でできた宝飾品の需要が増えました。
こうした要因によっても金の高値が続いています。
ちなみに、私は個人的に中国よりインドに注目しています。
中国の成長は失速気味…という話を耳にしますが、インドはまだまだこれからの国だからです。